08.12.15 検証シリーズ 映画「タイフーン」 Part 1

 ソウルで新作映画「1724妓生置屋乱闘事件」を観ることが出来ました。とても面白く時間を忘れて楽しんで来ましたが、現時点

 では全てのファンに観るチャンスがあるとは言えません。よって詳しい感想などは、ネタバレにもなりますので控えさせて頂き、

 みんなが観た後にとっておきます。興業のことは気になりますが結果は気にせず、ジョンジェさんが良いと思って選んだ作品を

 愛し続けて行きたいです。しばらくは「タイフーン」にお付き合い下さい。

 私にとって特別な作品、映画「タイフーン」の評判は賛否両論でした。万人が満足する作品など、あるはずもないので自分が

 良いと思えばそれで十分なのですが、批判的な意見の中で、どうしても弁護したい点について書いてみたいと思います。


              


 海賊シンの作戦は突拍子もないものだったのか?

 私が、見た限りで一番多かった批判的な意見は「シンの作戦が唐突過ぎる」と言った内容でした。詳細を挙げると、

 (1)2つの台風の相互作用で起きる現象「藤原の効果」を見込んでの作戦だが、現象が起こらなかったらどうするのか?

 (2)風船爆弾の発想が滑稽だ。

 (3)いろいろ準備してきたのに最終的には時限装置のボタン(赤)を押さなかったことが理解出来ない。

 (4)銃撃シーンが多く残酷過ぎる。


 また、同期の独身仲間と共にその作戦を阻止するために立ち上がったセジョンに対しても、

 (5)今どきの若者が国のために命を投げ出そうなどと考えるはずがない、美化して描いている。

 (6)これから死ぬかもしれないのに随分淡々としている。


 そして、全体的に、

 (7)訴えたいこと、言いたいことが多過ぎてまとまりがない。


 日本を代表する気象学者、藤原咲平との出逢い

 「タイフーン」の批判的意見に対抗する意味で重要な役割を担ってくれるのが、日本を代表する気象学者の藤原咲平です。

 私が出逢ったきっかけは愛読書に中に彼の甥のあたる作家、新田次郎の作品があり、最初に触れたのは富士山観測所勤務

 の経験から描いた「芙蓉の人」「八甲田山死の彷徨」などの山岳小説でした。その後発表された「武田信玄」「武田勝頼」など

 の歴史小説でますますファンになり、調べてみると幅広い分野で活躍した、又は現在も活躍中の家族や親戚が実に多いことが

 わかりました。その中でも特筆すべき人物が伯父の藤原咲平でした。新田次郎の本名は藤原寛人で「新田」は生まれた長野県

 諏訪市の地名に由来し、藤原咲平の弟の次男坊なので「次郎」となりました。伯父の影響で気象に興味を持ち、電気通信大学

 を卒業後気象庁に入り、富士山観測所に配属になったと思われます。ちなみに彼の妻は、敗戦後、子供を連れ満州より引き上

 げた体験を小説にした「流れる星は生きている」が戦後空前のベストセラーとなった藤原てい、数学者で次男の藤原正彦は、

 著書「国家の品格」で自国の伝統や美意識などを重んじることを説いてミリオンセラーとなり、2006年の流行語大賞まで受賞

 して「品格ブーム」を作りました。


『新田次郎の愛読書』


 藤原咲平は1884年、長野県諏訪市に誕生しました。東京帝国大学を卒業後、27歳で中央気象台(現在の気象庁)に入り

 31歳の時、ヨーロッパへ留学して最新の天気予報術を学び、気象学の基礎を確立しました。

 2つの台風が接近した時、互いが干渉し合って通常とは異なる進路をとる現象の存在を提唱し「藤原の効果」と呼ばれています。

 40歳には東京帝国大教授を兼任し、57歳の1941年、日本軍の真珠湾攻撃が行われた第二次世界大戦中に第5代中央気

 象台長に就任しました。その時、日本陸軍の嘱託で「ふ号兵器」いわゆる風船爆弾の研究に関わり、そのことが原因で戦後は、

 公職追放となってしまいました。風船爆弾は気流を利用して遠くに誘導させる兵器であり、気象学の知識が開発には最重要で

 あったと思われます。効果こそ少なかったものの、第二次世界大戦で使用された全兵器の中で、目的地への到達距離は最長

 を記録しました。


『藤原ていの作品、藤原正彦の作品、藤原咲平の石像、霧ヶ峰を飛ぶグライダー』


 他にも、気象の幅広い知識を活かし、グライダー飛行を諏訪市の霧ヶ峰高原が適地と考え、日本におけるグライダー発祥の地

 として広めたり、故郷で行われてきた神事「御神渡(おみわたり)」の研究などでも有名です。

 以上の通り私は、新田次郎から藤原咲平を知る機会を既に得ていたので、気象学の観点からも「タイフーン」は非常に興味深く

 独自の視点で作品を楽しむことが出来たのだと思います。


『気象庁研究員に説明を受けるセジョンたち、台風 ロム(風)とロプ(波)』


 「藤原の効果(Fujiwhara Effect)」が起こると確信出来たのは

 セジョンは、シンに激しい復讐心があることを本人から聞いており、それに加えて姉ミョンジュの言葉、

 「葛の根をかじっていた弟の上に風船が飛んで来ました。南朝鮮から飛んで来ました…」

 から、シンは台風の中に船で乗り出し、核廃棄物を風船で朝鮮半島に飛ばすつもりではないかと疑念を抱きます。

 その疑念に対して気象庁の研究員は、

 「1つの台風がもう1ひとつを吸収して威力をますようになります」「速度からして朝鮮半島で1つになると思われます」

 「もし、何かが台風の中をまわっていて、藤原の効果が重なると下降気流に乗って降りてくる可能性が非常に高くなります」


 と回答し、セジョンは疑念が疑念だけで済まないことを確信します。


『気象庁の研究員、「藤原の効果(Fujiwhara Effect)」の説明』


 ちなみに「藤原の効果(Fujiwhara Effect)」には、相寄り型・指向型・追従型・時間待ち型・同行型・離反型と6種類のパターン

 があり、「タイフーン」では、弱い方の台風が接近しながら急激に衰弱し、強い方の台風に取り込まれてしまう「相寄り型」だった

 と思われます。以上で「藤原の効果」については、何となくご理解いただけたと思いますが、これだけでは、(1)の批判的意見に

 答えているとは言えませんので、この先が非常に重要な部分です。


 どうしても現代科学では説明のつかない領域に踏み込まなければなりません

 海で過ごした時間が、いくぶん長い私は、時として森羅万象には、理屈抜きに人間の存在を超越した現代科学のレベルでは

 説明のつかない領域の存在を身をもって実感することがありました。それは宗教とか思想とか簡単に分類出来るものではなく

 とにかく自身の実体験のみで、上手な説明の語彙を持ち合わせていないのがもどかしいですが、大自然と人間が一体化して

 真理を教えられる瞬間が確かにあるのです。それは荘厳で美しく良いカタチでの一体化ばかりとは限らず、随分と厳しく激しい

 後悔を伴う場合も含みます。美しく素晴らしい体験はありきたりなので省略しますが、犯してはいけない領域を超えてしまった

 体験を自戒の意味を込めて紹介します。

 今から15年くらい前、まだマレーシア・シパダン島の存在を知らなかった時、日本から近いサイパン島の最北端に、究極の

 ダイビングスポットがある話を聞きました。季節を問わず穏やかで透明度が高い海のイメージがあったサイパン島ですが、

 そこだけは地形の関係か常に海が荒れ潮流が強く、潜れるのは1年に数日だけだとのことでした。そんな話を聞くと俄然潜って

 みたくなるもので、その「数日」の一番確立が高い時期はいつ頃なのかを調べ、5月〜7月だとわかりました。

 それからと言うもの、毎年その時期になると可能な限り出かけてチャンスを待ちましたが、滞在中に船が出ることが無いまま

 時は過ぎ、ようやく4年前の2004年6月15日、8度目にしてチャンスが巡って来ました。サイパン島の最北端は言い換えれば

 島で一番日本に近い場所です。ここは1944年、 アメリカ軍との戦闘で追いつめられた日本兵や民間人約12000人が

 「天皇陛下万歳」と身を投げた断崖で「バンザイクリフ」(正式名称:プンタン・サバネタ)と呼ばれています。


『バンザイクリフ(正式名称:プンタン・サバネタ)』


 私は以前から「バンザイクリフ」が、どんな場所であるかを良く知っていました。8度も行ってまで潜りたかったのは、単に珍しい

 ところに行ってみたいダイバーの好奇心ではなく、尊い命を落とした方々へ供養の意味を込めて潜りたいと思っていたからです。

 でも実際体験し、自分の考えが間違っていたと、はっきりわかりました。私などが、そこに潜ってなんの供養になりましょうか。

 きっぱり拒否されたと体全身で感じとることが出来ました。具体的にどんな様子だったかと言うと…

 船に乗ってしばらくすると、突然涙が込み上げて止まらなくなり、乗り合い船だったので周囲に恥ずかしく、船酔いで具合が

 悪いことにして到着まで横になって過ごしました。目的地に到着して間もなくダイビングを開始、午前9時53分でした。

 「潜水時間は45分間を予定」と確認後、水面近くは、風浪とうねりが高いので、一気に水深30メートルまで潜行、切り立った

 巨大な岩が所々に点在するダイナミックな地形で、魚影は無く、ただ透明感のある海でした。「水清ければ魚棲まずか…」

 あたりを見回し、どちらの方向に進むのか?と思った矢先、2人のガイドが妙に慌てて「あがりましょう!」の合図を出しました。

 「えっ!!?? まだ数分しか潜っていないのに?」仕方なく指示に従って船に戻り、理由を聞くと「巨大な鮫が接近して極めて

 危険だと思い戻りました」「4〜5メートルはありました」「獰猛で危険な種類の鮫でした」と口々に怯えて話すのです。

 巨大鮫などいませんでした。ゲストは誰も見ていないし、透視度・透明度の高い海で、私の当時の視力は両目とも2.0でした。

 我に返って時計を見ると午前10時22分、タンクの空気は半分以上も減っていました。数分しか潜っていないはずが29分間

 潜っていたことになります。記憶は5分間くらいしかなく狐につままれたような気持ちでした。8度目にしてようやく潜った海で、

 一度もカメラのシャッターを切ることすら忘れ「そう言えば一枚も写真が無い」と気づいたのは随分あとになってからでした。

 ガイドを責める気持ちも起こらず後味の悪い疲労感だけが残りましたが、この時を境に「目には見えない世界が存在すること」

 を以前にも増して強く感じるようになりました。

 それから1年後の2005年6月28日、天皇・皇后両陛下はバンザイクリフを慰霊にご訪問されました。その後、ホテルへ向かう

 途中、車を降り事前に公表された日程表にない「おきなわの塔」「韓国平和記念塔」にも立ち寄られ哀悼の参拝をされたのです。

 私はこの出来事で少し救われた思いがして、お二人に心から感謝するとともに、お二人を大変誇りに思いました。


『海賊村のシンと祈祷師の老婆』


 シンが、タイの海賊村に住む祈祷師の老婆が言った「藤原の効果が起こること」を信じて行動を急いだ気持ちが良く理解出来る

 のは、以上のような体験から五感を超えた世界があることに気づいたからです。

 藤原咲平も、東京帝国大学在学中に起きた千里眼事件(明治時代の末、千里眼・念写の能力を持つ女性に対して、東京帝国

 大学や京都帝国大学の学者が実証しようと、公開実験や真偽論争などを行った一連の騒動のこと)では、長尾郁子という女性

 の能力を信じて実験を行った記録が残っています。


『故郷のうたを哀しげに歌うミョンジュ、海賊村からタイフーン号へ向かう姉弟』


 シンもまた、海で過ごした多くの時間の中で、また脱北と言う極限状態の中で、それに比べたら取るに足りない私の体験とは

 比較にならない体験を重ねて来たことで、信じざるを得なかったでしょう。

 病魔に冒され怪我も負った姉のミョンジュに「一緒に家族のいる所に行って幸せに暮らそう」

 そして最後、セジョンに「おれたち… 来世では…」


『セジョンと11人の同期独身仲間、ユ・ジュンギ大尉』


 対するセジョンも、海軍将校として経験を積んできた中で、「自分の命が常に明日をも知れない」ことや日常的に海に身をおいて

 ごく自然に気づいたことでしょう。

 出撃前、お母さんに宛てた手紙の中で、シンに対して「もし来世で彼に合えたら友達になりたいと思います」

 その仲間のユ大尉も「哀れな独身男達が、あの世でラグビーでもしようってことか?」


『武器庫をあとに駐機場へ向かうセジョンたち、太極旗に挙手敬礼するセジョンたち』


 結論として

 (1)「2つの台風の相互作用で起きる現象「藤原の効果」を見込んでの作戦だか現象が起こらなかったらどうするのか?」は、

 シンが実体験から現象が起こることを確信して計画を練り、実行に移したと言えるので、説明のつかない見切り発車ではなく

 「現代科学とそれを超越した領域との融合による計画」であると考えられ、辻褄の合わない作戦とは言えません。


『ヘリウム入り時限装置付き風船、シンの最期(開いたまま息途絶えた目を閉じるセジョン)』


 オ・ミンさんの「セジョンの gif collection」は遂に出撃シーンを向かえました。

 オ・ミンさんのご好意で、音楽だけでなく動画部分も私の好きなシーンを、じっくり見られるような別バージョンになっております。

 『今後の出撃シーンは「RIOT」の中でも哀愁感が漂わない爽やかな疾走系「Flight of the Warrior」を、お母さんへの手紙を読む

 シーンは詩の内容で表現しようと「Soldier」を予定しています。「ソルジャー 荒れ狂う海を進み 力強く立つ 勇ましく自由な心で

 祖国を守る」
と歌っています。』と、前シリーズで書きましたが、これ1つだけでは勿体なさ過ぎるので別バージョンも作りました。

 インディアンと白人の闘争史を題材にしたコンセプトアルバム「THE BRETHREN OF THE LONG HOUSE」に収録されている

 「Glory calling」は、正統派疾走系メタルで出撃シーンにとても良く合います。美しいギターソロが哀愁感をかもし出したところで

 「Soldier」へ、つなげました。


 MV『セジョンの gif collection-8(制作 オ・ミンさん) RIOT Flight of the Warrior & Soldier』

 MV『セジョンの gif collection-8(制作 オ・ミンさん) RIOT Glory calling & Soldier』


 次回は風船爆弾に関する熱い想いが炸裂します。


 
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